よくあるご質問
日頃より、患者様から頂くご質問をご紹介いたします。妊娠・出産などに対するお客様の不安を少しでも取り除くお手伝いになれば幸いです。ぜひ、ご参考になさってください。
ご質問のもくじ
稽留流産で胎児が育ってないと言われました。
次の妊娠は大丈夫でしょうか?
胎芽あるいは胎児が子宮内死亡後、臨床症状(出血・下腹痛など)がなく、子宮内に停滞している状態を稽留流産といいます。
超音波断層法で胎芽・胎児が※1胎襄(GS)内に認められないかどうかを妊娠週数と比較し、判断します。
1回だけでは判断が困難な場合もあり
、数回日を置いて観察することが必要な場合もあります。
このような、妊娠初期の流産は決して少なくありません。妊娠全体の約10~15%が妊娠初期に流産してしまうといわれています。
妊娠初期の流産の50%以上は胎児因子によるとされ、元々の受精卵に生命としての深刻な問題(染色体異常や重篤な奇形を合併するなど)が存在したためにそれ以上は生存・発育することができなかったためと考えられています。
無理をしたとか、精神的動揺があったなど、妊婦さんの行動に原因があった訳ではありません。 3回以上自然流産を繰り返す場合を習慣流産といい、この場合はその原因(子宮の形態・内分泌疾患・感染症・染色体検査・自己抗体の検査・母子間の免疫失調の検査など )を精査することがすすめられています。
しかしこの方のように1回目であれば、偶発的に生じた事と判断され、次の妊娠について過度に心配されることはないと思います。
- ※1胎襄
- 赤ちゃんが入っている袋のことをいいます。妊娠5週ごろから見え始めます。
つわりがあるのですが、
どんなものを食べたらいいですか?
つわりとは、妊娠5~6週頃より早朝の空腹時を中心に、悪心・嘔吐・食欲不振・食嗜変化・唾液分泌亢進などの消化器症状が出現し、妊娠12~16週ごろには自然軽快する病態で、全妊婦の約50~80%にみられるといわれています。初産婦に多く、一人娘や未婚に発症しやすく、心因性要素も関与すると考えられています。
つわりの成因としては、妊娠に伴う内分泌学的変化、代謝性変化、精神医学的要因などが主に考えられていますが、未だにはっきりしません。近年、Helicobacter pyrori(ヘリコバクターピロリ菌)の関与が報告されており、今後のつわり治療に新たな方向性を示すものとして期待されています。朝に嘔吐が出現しやすいのは消化管の蠕動(ぜんどう)運動低下による胃液貯留が夜間に起きやすいためとされます。悪心・嘔吐が朝だけでなく、日中も出現し、食事の摂取ができにくくなり、脱水症状や尿ケトン体が出現し、体重の減少が明らかになれば、外来または入院加療が必要になってきます。
つわりには、環境因子、心理的因子を改善することが大切です。食事の用意をしているとそれだけで悪心・嘔吐が出現しやすいため、外食や実家で食事をするとよい場合もあります。夫から離れて実家に帰るだけで軽快することもあります。既製品に頼る事も一つの方法です。(宅配・店屋物など)。とにかく、栄養のバランスなどは考えずに、好きなものを、好きなときに、好きなだけとるのが原則です。
具体的には食事は1日5~6回に分け、比較的冷たくてあっさりしたものをとり、食事と飲み物は一緒にとらず、食間に冷たい飲み物を摂取し、夜間も3~4時間ごとに何か口に入れるようにします。
水分が取りにくい時は氷をなめたり、炭酸飲料なら飲める人もいます。
摂取しやすい食べ物は、1人1人違い、シャーベット・スープ・ゼラチンなど冷たくてのどごしのよいもの、ビスケット・トースト・クラッカーなど乾燥してパサパサしたもの、トマト・りんご・グレープフルーツ・梨・すいか・いちご・桃缶詰めなどの果物、少し油っぽいですが、なぜかフライドポテト、ポテトチップス・おにぎり(冷えたご飯)・サンドウィッチ・ヨーグルトなど食べれるものを吐いてもよいですから少しずつ口に入れて下さい。食べた後は、すぐに横にならない方がよいようです。
生唾が出てそれが飲み込めない人は、あめやガムで生唾を抑えることができる場合もあります。
つわりの時の食べ物に、これなら絶対食べられるというものはなく、食べたいときに、食べたいだけ食べるしかありません。夫や同居の家族の理解、上の子の食事の事など家族の協力が必要となります。つわりの成因と解消法について正確な情報を得て、妊娠に対して前向きな姿勢を持つことも大切です
妊娠中に海外旅行に行ってもいいでしょうか?
妊娠初期であっても、出血や褐色の帯下、下腹痛、おなかが張るといった流産徴候がなく、超音波で胎児の心臓の動きが認められていれば、旅行が原因で流産される可能性は少なく、海外旅行をされてもかまわないと思います。
しかし、これから計画されるのであれば一般的には胎盤が形成され安定期となる妊娠16週目以後が望ましいとされています。妊娠末期に計画をされる方は少ないと思いますが、航空会社によって異なりますが、出産予定日を含め28日以内の場合、診断書・同意書・付添人・医師の同伴などが必要になる場合もあり、分娩開始や産科異常などが起きる可能性もありますので、この時期の旅行はおすすめできません。
いずれにしても、ぜひ旅行に行って下さいというわけではないので、ご主人や家族の方とよく相談されて決めてください。
また、特定の国では予防接種が要求されることがあり、予防接種が生ワクチンであれば、妊娠中は原則的に接種はできませんので、予防接種を受けなければならない国への旅行は避けられた方がよいでしょう。旅行中は決して無理はされないで、お腹が張れば横になって休むなどしてください。特にツアーは、スケジュールがきつく、ゆったりした時間がない場合もありますので、注意が必要です。
お腹が痛んだり、出血があれば添乗員などに相談されて現地の産婦人科医に診てもらうことも必要になります。病気になっても薬剤の内容によっては、使用が困難な場合もありますので、食事や飲料水にも気を使ってください。慢性疾患などの合併症のある方は、時差や旅行の疲れによってコントロール不良となる場合もありますので、主治医と相談されアドバイスに従ってください。
何事もなく、思い出がいつまでも心に残る旅行をされる事を願っています。
妊娠中にはタバコをやめなければいけませんか?
若い女性の喫煙率の増加に伴い、妊娠されて喫煙の事を心配される女性の方が、この方のように増えています。
喫煙によって胎児に及ぼす有害作用物質は、一酸化炭素・ニコチン・シアン化合物などがあげられ、他にも胎児に悪影響を及ぼす物質があると考えられています。
一酸化炭素は、容易に胎盤を通過し、血液の酸素運搬機能を低下させ、さらに酸素解離を困難にし、組織中への酸素放出を低下させます。一酸化炭素吸入による被害は、母体より胎児の方が大きいといわれています。
ニコチンは、血管収縮作用により子宮胎盤血液量の低下を起こし、胎児への酸素供給を不良とします。シアン化合物も、胎盤を容易に通過し解毒される過程でビタミンB12や、含硫アミノ酸が必要とされ、これらの消費が胎児の蛋白合成阻害を引き起こし、成長を遅延させます。このような理由で、妊娠中の喫煙は低出生体重児・早産・流産・死産・胎盤機能不全・胎児低酸素症の原因となります。また、能動喫煙のみならず、ご主人や職場の同僚の喫煙による受動喫煙によっても多かれ少なかれ有害物質を自分の意図に反して摂取することになり、胎児への影響は免れないものと考えられます。
喫煙と胎児奇形との関係はさまざまな報告があり、現在のところ結論は出ていません。しかし、タバコにはベンツピレンのような催奇形性物質が含まれており、胎児奇形の可能性は否定出来ません。
このように、喫煙が母体・胎児に与える影響は明らかです。生まれてくる赤ちゃんのためにタバコはやめられた方がよいと思います。また、周囲の方も、喫煙の際には配慮が必要だと思われます。
出産の為に実家に帰省します。
いつも飛行機ですがシートベルトの圧迫や気圧の変化が心配です。
日本の航空3社では、妊娠36週未満までの異常を認めない妊婦の搭乗には、制限がありません。
いつも飛行機を使われているなら、妊娠中異常がなく、合併症がなければ、飛行機で帰省されても問題は無いと思われます。気流が乱れることがあるため、妊婦もシートベルトを締めた方が安全とされています。
安全な装着の仕方として、妊婦用に延長されたベルトを使用し、ベルトとお腹の 間に毛布を挟み、腹部の下で股関節部を横ぎるように締めることが推奨されています。
高度が1万メートル前後になると、機内の気圧は0.7~0.8気圧に下がり、動脈中の酸素分圧も低下しますが、血中ヘモグロビンの 酸素飽和度は維持され、通常、健康な妊婦に影響を与えることはありま せん。
しかし、心血管系疾患を合併する方では影響があることもありますので、主治医とよく相談してください。そのほか切迫早産・前置胎盤・妊娠中毒症・高度貧血・血栓性静脈炎の既往がある方も注意が必要です。
実際に帰省される前には、特に異常がないと思われても、念のため主治医に相談してください。
授乳中ですが、市販のかぜ薬は飲んでよいのでしょうか?
また、サプリメントはどうでしょうか?
お母さんの飲んだ薬は、その種類によって異なりますが、母乳中にある程度移行します。しかしながら市販の風邪薬(消炎鎮痛剤・抗ヒスタミ ン剤・鎮咳剤などが含まれる)を通常量、数日間服用されるのであれば、母乳にでても心配は無く、母乳を中止する必要はないとされています。
母親が摂取した薬剤が児へ影響するかどうかは、母乳移行の程度(薬剤の分量・イオン化・脂溶性・蛋白結合により規程される)、乳児の哺乳量 および哺乳の時期、乳児の薬物吸収、吸収された薬物の乳児への影響を考える必要があります。
アメリカ小児科学会の報告などを参考にして、安全性・危険性の根拠を確認し、最終的にはご本人が服用するかどうかを判断するのが望ましいといわれています。実際、授乳中に薬を飲む場合には、本当に必要な薬だけを飲むようにし、より安全とされる半減期の短い薬を選択し、授乳のすぐ後に服用したり、授乳後長く睡眠する際には、その直前に服用しましょう。
それでもどうしても気になるのなら、服用後薬剤血中半減期以後1回搾乳し、それを捨ててから授乳してください。
サプリメントも通常量であれば問題ないと思われます。産後は、授乳、育児・その他で忙しく食生活がおろそかになりがちです。加工食品や調理済み食品に依存し、栄養のバランスが悪くなり、摂取量 が少ないと思われる場合にはサプリメントも良いでしょう。
しかし、基本はあくまでも「バランスのとれた食事」です。広範囲の食品の中から、栄養バランスを念頭において、種々の食物を蝶理することが大切なのは言うまでもありません。
ご存知のように、母乳育児は赤ちゃんにもお母さんにもとても大切なことです。色々な問題が生じるかもしれませんが、母乳育児で頑張ってください。
出産費用や、県などの助成について教えてください。
各種費用・各自治体の制度について簡単ではありますが、まとめましたのでご参考になさって下さい。
なお、制度についての内容などは、変更されている場合がありますので、詳細につきましては、ご自身でお問い合わせください。